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はじめに

高木研究室に関心をもっていただき、誠にありがとうございます。研究室では、随時見学を受け入れていますので、気軽に高木までメール連絡ください。高木もしくは大学院生が丁寧に対応します。本学ソフトマテリアル分野3年生の学生さんは、アポなしで部屋に来てもらっても、時間の許す限り対応いたします。他大学から大学院に進学される方には、これまでのバックグラウンドを踏まえた研究をしていただけるようにします。過去にも他大学からの受け入れ実績がありますので、興味をもっていただけた方は、メールでの連絡をお待ちしています。昨今の社会情勢を鑑み、Zoomなどを使ったオンラインでの説明も可能です。

研究室を選ぶにあたって

皆さんが研究室を選ぶ基準はなんでしょうか?知り合いの先輩がいるから?何年も苦楽をともにする研究室では大切なことかもしれません。先輩からどんな研究室なのか情報収集してください。面白そうな研究をしているから?本当の面白さはやってみないとわからないところがありますが、自分のインスピレーションに頼ってみるのもアリかもしれません。人数が多いから?年度により増減はあるものの、高木研究室は10名程度で活動しています。鈴木・松岡研究室と同じフロアに居を構えていますので、悩みがある際は、違った教員に相談することも可能です。厳しそうだから?コアタイムに縛られずに研究しましょうと念仏を唱えてます。3年までの怠惰な生活に区切りをつけ、トコトン研究に打ち込んでみようと思っている学生さんも大歓迎です。成績に自信があり、実力を発揮したい学生さんにもやり甲斐のある環境を提供します。

研究室での生活は

毎朝9時半には登校しており、止むを得ない理由がある場合は、学生個人に任せています。先に書きましたように、コアタイムを声高らかに言うことは避けたいのですが、夕方は5時半までは実験し、もっと遅くまで頑張っている学生もいます。学生一人当たり、半期に1〜2回の研究報告と雑誌会をやっています。一年に最低一回は、高分子学会や日本化学会といった学会の場で発表することを推奨しています。ジャーナル論文として報告できるまで研究レベルを高めるための最初の一歩です。一方、他人に研究目的や実験成果をわかりやすく説明できるようになること、同じような世代の学生がどんな研究をしているのか吸収することも理由として挙げられます。

研究するということ

与えられた研究課題を追究して得られる実験結果は、想像したものと異なることの方が多いかもしれませんが、決してこれは失敗ではありません。過去の研究成果に基づいて綿密に計画を立て、注意深く行った実験から得られる結果は、すべてが真実です。この結果を真摯に受け止め、新しい計画を立てて実験するという行為の繰り返しにより、誰も見つけていない宝物が発見できます(宝探し)。目的こそ違えど、企業における研究開発にも同じことが言えます。新しいことにチャレンジする行為を楽しみつつ、有意義な研究生活を送ってください。苦労のなかから得られる経験は、必ず将来の財産になります。研究室のメンバーが刺激し合い、互いに成長できるような運営をしていきたいと考えています。また、皆さんが苦労して積み上げた実験成果をジャーナル論文として後世に残すことを重要視しています。これが大学における研究活動の一つの区切りと言えます。

どんな研究をしているのか

電界効果トランジスタ、薄膜太陽電池、電界発光ディスプレイ、高感度センサー、バイオイメージングなどへの応用が期待されるπ電子系材料(分子サイズに強いこだわりはありません)の開発を行っています。材料開発と書きましたが、合成分野に所属する高木研究室では、化合物を作るステップを大事にしたいと考えています。学部の講義で言えば、有機合成化学や高分子化学の知識をフル活用して研究を進めます。美しい分子構造には、優れた物性や従来にない機能性が宿るとの期待=信念のもと、いわゆる精密(高分子)合成にも興味をもって取り組んでいます。化合物の物性をとことん理解して機能発現へと繋げるために、他機関の研究者とも積極的に連携することを心がけています。代表的な研究内容は、以下を参照ください(ただし、ごく最近の内容は反映できていません)。

研究の具体例

π電子を空間にならべる

窒素上に置換基を有する第三級芳香族アミドは、2つの芳香環が同一方向を向いたE体が優先する。このため、3-アルキルアミノ安息香酸誘導体の脱水縮合反応では、鉢状の環状3量体(カリックス[3]アミドと略称)が比較的高収率で得られる。カリックス[3]アミドを鋳型として、芳香環上にビチオフェンを導入したオリゴマーを合成したところ、近接位のπ電子系に相互作用が確認された。溶媒の種類に応じてコンフォメーション変化するのに伴って、異なる発光色が観測された(J. Org. Chem. 2011)。

カリックス[3]アミドには鏡像異性体が存在するものの、溶液中では、素早いベンゼン環の反転により容易にラセミ化してしまう。カリックス[3]アミドに基づくキラリティーの概念を拡張すべく、2つのカリックス[3]アミドに3つのビチオフェンを結合させたチューブ状オリゴマーを合成した。理論計算と実験から、π電子系に誘起された動的三重らせん構造を決定した(Chem. Eur. J. 2013)。

一方、4-アルキルアミノ安息香酸誘導体の脱水縮合反応では、対称性の高い柱状の環状3量体が得られる。ブロモ基をもつ誘導体をマイクロ波加熱下で縮合反応させると、ジアステレオ選択的な環状三量化が進行し、薗頭カップリング反応によりフェニルエチニル基を導入したところ、π電子系に静的三重らせん構造が誘起された(Chem. Commun. 2015)。

さらに、複数のπ電子系を空間配列させることを目指し、第三級芳香族ポリアミドを鋳型とする合成も行った。開始剤を用いて、ベンゼン環上にビチオフェンをもつ4-アルキルアミノ安息香酸誘導体を連鎖重合させると、ポリマー側鎖にπ電子系をスタックさせることができた(高分子論文集 2011)。キラル側鎖を有する光学活性ポリマーでは、π電子系のらせん状配列に成功し、側鎖により配列が異なることを示した。アミドカルボニル基をメチレンへと変換すると、ポリマーのコンフォメーションとともにπ電子系相互作用が変化することが分かった(Macromol. Chem. Phys. 2018)。

π電子を規則的につなげる

前述した第三級芳香族アミドがE体を優先してとる立体構造に着想を得て、1,4-ビス(アルキルアミノ)ベンゼンとジブロモジテレフタル酸の重縮合で得られる芳香族ポリアミドをパラジウム触媒で処理し、アミド架橋された剛直な共役ラダーポリマーを合成した(Polym. Chem. 2015)。

次に、ここで習得した直接アリール化を応用し、ラクタム骨格を有するπ拡張共役オリゴマーを合成した。分子の平面性、および分子間に働く相互作用は、カルコゲン元素と末端ユニットに影響され、n型の電界効果トランジスタ材料として有用なπ電子系材料を得ることができた(Chem. Eur. J. 2018)。

一部の共役オリゴマーがフレキシブルな単結晶を与え、メカノフルオロクロミズム特性(応力によって発光色が変化する)や優れたウェーブガイド特性(光エネルギーを高効率で伝える)を見出した。分子量が大きな化合物でも、適切な分子間相互作用を導入すれば、フレキシブル性が維持できることが分かった(Angew. Chem. Int. Ed. 2018)。

さらに、N,N’-ジアルキルウレアを鍵骨格とした分子内直接アリール化によって、キラルなビフェニルやターフェニル化合物を合成した。カルコゲン元素の種類によりラセミ化エネルギー障壁が大きく異なることを示した(Eur. J. Org. Chem. 2019)。

これらの合成の基本となるのは、極性官能基の特異な立体化学であるが、単純なアルキル鎖においても分子内直接アリール化が効率的に進行することを見出した。ポリ(2-ブロモスチレン)を前駆体としてパラジウム触媒で処理すると、共役鎖と脂肪鎖からなる共役ラダーポリマーが得られた(Polym. Chem. 2019)。

π電子を自由にあやつる

上述の研究過程で、イミダゾールやイミダゾリウムの構造有機化学に興味を抱き、ソフトマテリアル分野へと研究展開した。4,5-ジブロモイミダゾールから短工程で縮環共役イミダゾリウムオリゴマーを合成した。低極性溶媒中では、イオン相互作用が強く働き、蛍光量子収率が低下することが分かった(Org. Biomol. Chem. 2013)。

ベンゼン環を介して2位に電子供与もしくは電子求引性置換基を有する類似の共役イミダゾリウムオリゴマーを合成した。DFTおよびSAC-CI法を用いた高精度量子化学計算により、吸収と蛍光特性を詳細に議論した(J. Org. Chem. 2015)。

また、イミダゾール骨格をもちESIPT蛍光を示す共役オリゴマーを合成した。2位のフェノールとイミダゾールを炭素ー炭素二重結合で架橋すると、分子のねじれが抑制されることで、Enol蛍光よりもESIPT蛍光が優先することを示した(J. Org. Chem. 2017)。

次に、単純な構造でESIPT蛍光を達成することを念頭に、分子内に二重水素結合を形成する共役オリゴマーを簡便に合成した。二重結合架橋を有する化合物と異なり、プロトン性極性溶媒中でもESIPT蛍光を示した(New J. Chem. 2018)。

一方、長鎖アルコキシ基を複数もつ縮環イミダゾリウム共役オリゴマーがヘキサゴナルカラムナー液晶となり、π電子系が相互作用することに由来する特異な蛍光発光を観測した。液晶状態では、励起波長に応じて発光波長が変化する興味深い現象を見出した(RSC Adv. 2016)。

また、ヨウ素を2位に有するイミダゾリウム化合物が弱いルイス酸性を示すことを利用し、π電子系有機触媒によるビニルエーテルの精密カチオン重合を達成した。これまで結晶工学や分子認識化学での利用に限られていたハロゲン結合相互作用を高分子合成化学に展開した初めての例である(Chem. Eur. J. 2017)。

さらに、前項のπ電子系をつなげる直接アリール化を利用したデバイス材料開発にも取り組んだ。反芳香族性を有するジチアルビセンをコアとし、末端に電子求引性基を導入したπ拡張共役オリゴマーを合成した。分子全体に広がったLUMO軌道を維持しつつ、エネルギー準位を下げることに成功し、大気下でも安定したn型トランジスタ特性を示した(J. Mater. Chem. C 2019)。

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